大阪で少林寺拳法 〜 金剛禅総本山少林寺 大阪高槻道院

100の真実に混じる1つの嘘で人は簡単に騙される

Posted on 2010年01月19日

ベリトまたはベリス(Berith)
元X JAPANのTOSHIが自己破産を申し立てた。解散したX JAPANと言っても、その知名度は抜群で、昔タイに旅行に行ったときに解散した後であったにも関わらず、X JAPANフィーバーが起きていたのがすごく記憶に残っている。

で、そのスーパーバンドの元メインボーカルであったTOSHIが何故自己破産することになったかと言えば、自己啓発セミナーなどを手がける団体「ホームオブハート」に入信し、財産すべてをもってかれたから、という事になっている。

その内容を書いた記事を少し引用してみると、

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X JAPANのTOSHIさん自己破産「だまされた」
https://www.asahi.com/national/update/0118/TKY201001180338.html
朝日新聞 2010年1月18日19時43分

 ロックバンド「X JAPAN」のTOSHI(トシ)さん(44)が18日、東京都内で会見し、自己破産したことを明らかにした。破産の原因については、TOSHIさんが参加していた自己啓発セミナーなどを手がける団体「ホームオブハート」(栃木県)から「ばくだいな税金と借金が課せられた」と説明した。TOSHIさんはホームオブハートとはかかわりを絶つことも明らかにした。

~~ 中略 ~~

 ホームオブハートをめぐっては、詐欺などの被害にあったとして元セミナー生らによる損害賠償を求める訴訟が起きている。TOSHIさんは「だまされていたことからやっと目が覚めた」と話し、「広告塔」という批判があることについては、「自分のせいで巻き込んでしまったなら申し訳ない」と述べた。
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事件の概要をものすごくざっくり書けば、要するに自己啓発セミナーと自称する悪質な詐欺グループの巧みな話術にハメられて、X JAPANの元ボーカルという知名度抜群であったTOSHIが自らがその団体の宣伝をして回り、あちこちで歌を歌い、ファンからお金を集め、本来歌に対して支払いを受けるはずだったものが、全く支払われずに破産に追い込まれた、というものだ。

破産までいってようやく騙されていた事に気がつき、今回の記者会見となった、という話になる。

■自己啓発セミナーの罠■

この自己啓発セミナーの代表者であるMASAYA氏の話をしているシーンがテレビで放送されていたけれども、一見言っていることがすごくまともなように聞こえたりする。

愛だなんだという言葉を巧みに用い、すべてを捨てて奉仕することが真の自分に気がつき、真のしあわせを手に入れる方法である、みたいなことを言うわけだ。

この「すべてを捨てて奉仕する」という大儀名分の元に、ホームオブハートは何をやらせるかというと、

・MASAYA氏を絶対的な指導者としてあがめさせる
・莫大な費用のかかるセミナーに参加させ、私財をはき出させる
・金が足りないときは、「金への執着をなくす」という目的で、巨額の消費者ローンをさせる
・団体に批判的な家族から引き離して生活させる
・所属しているスタッフに無償で長時間労働させる
・学校などには行かせず、外界との接触を一切断たせる

なんつーことをやる。

これだけ見れば、オウムそのものだ。でも、何故こゆ団体にTOSHIがはまってしまったのだろうか?

■二枚舌の悪魔ベリト■

キリスト教の悪魔の中に「ベリト」という悪魔がいる。この悪魔は二枚舌でよく嘘をつくとされ、ある漫画の中では、千の嘘の中に一つの真実を言う悪魔、として描かれている。

ベリトはその普段からの言動から、何を言ってもすべて嘘だと思い込まされており、敵対する大悪魔に対しても日頃から嘘しか言わなかった。が、本当に重大な局面において、ベリトはその大悪魔に一つだけ「真実」を口にする。

大悪魔はそのベリトの「真実」を「嘘」だと思い込み、その結果窮地に立たされる結果となる。

このベリトの説話を見てもわかるように、日常的に「嘘」しか言わない人物だと、その中にたった一つの「真実」が混じっていたとしても、それが「真実である」とわからなくなる。

この心理は、逆も同じ事で、日常的に「正しいこと」を聞かされ続けていると、その中にたった一つの「嘘」が混じっていると、嘘を嘘だと見抜けない。

100の真実は、1つの嘘を真実に変えてしまうのだ。

■ホームオブハートの「嘘」■

ホームオブハートは「自己啓発」という大儀名分の元に、一般的に「正しい」と思われていることをまず吹き込む。ひたすら「愛」だ「平和」だ「やすらぎだ」などという言葉を信者にたたき込むわけだ。

信者が、広く一般的な常識で判断して「正しい」とわかっていることを日常的に聞かされているものだから、MASAYA氏の話す言葉は「すべて真実である」と思い込んでしまう。

ここに「ベリトの罠」がある。

■「ベリトの罠」に引っかからないためには■

元X JAPANのTOSHIはMASAYA氏の仕掛けた「ベリトの罠」にひっかかった。外から見ている我々からしてみると、こんなうさんくささ爆発してる団体に、何故引っかかるんだろうか、としか思わないかも知れないが、内部に入ると「ベリトの言葉」の真偽は見分けられなくなる。

少林寺拳法の開祖 宗道臣先生は、「念仏を唱えればあの世で極楽に行けると信じ込ませ、金銭を要求する念仏僧達に本当の宗教心などない」と喝破された。

少林寺拳法では、「正しい情報を知る努力をする意味」を教え、おかしな宗教にハメられないようにするには、どうすればいいか教えています。

どんなに「綺麗な真実」を口にしていても、その途中で「それはお金によって得られる」という「嘘」が混じり込んできたときは、それは「ベリトの罠」だと思った方がいい。

真の幸せは、自分の智慧と努力、そして他人との調和によって生まれるもので、「お金で得られる」ものではないし、まして「どこかにお金をつぎ込む」ことで得られるなんて言うのは、まずもってありえないことなのだ。

(北野)