最古の教範を入手しました!
古い話になりますが、2011年の4月に「古い教範を入手しました!」という記事を投稿したことがあります。
内容としては、開祖が書いた教範についた記事になるんですが、教範は何回か改訂され、開祖が亡くなられた後には一部写真を差し替え上下巻に分けてさらに改訂が重ねられた物が、2020年現在、金剛禅総本山少林寺より下賜されています。
この「古い教範を入手しました!」の記事に続けて、2016年1月に「さらに古い教範を入手しました!」という記事を投稿しました。
この記事は、開祖が残した教範の中でも技術資料が充実した最初の教範についての記事で、使われている写真も現在の教範とは大きく異なり、少林寺拳法の技術の原点を知ることが出来る教範として紹介しました。
「技術の原点」とあえて記載しているのは、少林寺拳法の原点は技術ではなくあくまでも思想が先にあり、金剛禅総本山少林寺の成立ともに少林寺拳法の思想の原点をひもとく資料としては、2016年に紹介した昭和三十年版教範のさらに前の、昭和二十七年版教範をたどる必要があります。
この昭和二十七年版教範は、さすがに原著となると流通数がもの凄く少ないこともあり、平成8年に行われた少林寺拳法50周年事業の一つとして、復刻版拳法教範、として世の中に再流通しました。
50周年事業の時には僕は既に拳士だったので、この時復刻版拳法教範は入手しているんですが、それでももう24年が経ってるんですねぇ(゚゚)
さて、ここからが今回の記事になるんですが、この昭和二十七年版教範の原著を入手したので、紹介したいと思います(=゚ω゚)ノ
入手しました!と書いていますが、実際に手に入れたのは何年か前の話なので最近の話ではないですが、復刻版拳法教範の方はオークションやらフリマサイトやらに出回ることが多いので見かけたことがある人も多いと思うんですね。
実際、50周年事業の時にかなりたくさん出版されたので、オークションでもそこまで高価になることなく、普通に入手することが出来ました。今でも入手できるかどうかは分かりませんが、5,6年前は何千円かで出品されていましたねぇ。
今回紹介するのは、復刻版拳法教範の右隣に写っている一回り小さい「拳法教範 第一巻」と書かれた冊子になります。
この写真では薄い緑色の表紙になっていますが、元々は真っ赤な表紙だったと聞いています。
冊子の状態としてはさすがに68年も前の書籍なので、あんまり触るとボロボロに砕けてしまいそうなので、昭和三十年版ほど気軽に中を開くことはありませんが、書籍としては誰かが書き写した写本ではなく、原書だというのは復刻版拳法教範と見比べてみてもわかります。
まず原書だと断言できるのは、復刻版拳法教範には最初の冒頭のところに「原著にあった正誤表の文字の訂正以外は可能な限り手を加えずに発行した」との記載があり、今回紹介する原著と復刻版は、ページ割りが全く同じになっています。
書体も同じなので、復刻版拳法教範は原著を忠実に再現し復刻した物であることが、見比べることで確認出来ます(^^)
特に本物なんだろうなと思うのは、原著の方には復刻版拳法教範に記載があるように「正誤表」が添付されているところでしょうか(笑)
復刻版拳法教範には「かろうじて世間に残っている物は10冊もないんじゃない?」という記載もあるように、原著を見たことある人の方が今は少ないかも知れません。
僕はこの記事で紹介しているものと、もう一冊何年か前にヤフオクですごい高い値段がつけられていた物を一冊見たことがあるだけで、それ以外は武内章臣先生からお話でお伺いしたことがあるぐらいで、手に取ってみたことあるのはやはりこの記事の一冊だけですね。
昭和三十年版教範は徳島の坂井勲先生のところで拝見したのと、田辺眞裕先生が持っているとお話をお伺いしたことがあるのと、武内章臣先生も持っておられるのと、道院長仲間では大阪北道院の服部先生も先代の先生から受け継いだものがあるというのを聞いているので、探せば多分古い先生ならみんな持ってそうな気はします(笑)
技術の原点に興味がある方は昭和三十年版を探す方がいいですが、今回紹介している昭和二十七年版については、中身は復刻版拳法教範と同じなので、そこまでレア感のある一品ではないですが、原著はレアだと思います(笑)
古書としての原著に価値を見いだすとしたら、やっぱり中に含まれている書き込みの数々ですね(・・)(。。)
今回紹介している本書には、そこかしこに赤線や黒線、○印がつけられています。
この原著は、おそらく開祖が最初に教範を出されたときに当時の直弟子のお一人が手にされ、開祖が実際にこの教範を手に少林寺拳法の思想についてお話なさったときに、大事だと思ったからこそ赤線を引いたりしたんだと推測出来ます。
今新入門の拳士に配布されいる金剛禅読本で強調されている部分と、本書で赤線が引かれている部分が同じだということを確認出来るだけでも、少林寺拳法の歴史・思想は変わることなく受け継がれている事を確認する事が出来ます。
こういった歴史を検証できるだけでも、本書の価値は何物にも代えがたいものだなと僕は思います(^^)
まあ、原著はともかく、中身については復刻版拳法教範と同じなので、少林寺拳法の思想の原点を確認したいときは、まだ入手可能な復刻版拳法教範をお求めいただいて、今の金剛禅読本と復刻版拳法教範を見比べながら、少林寺拳法は技術だけではないんだなぁと、少林寺拳法の原点に思いを馳せいただければ幸いです。
■ 教範をどうとらえるか?
少林寺拳法の教範は、思想について書かれた部分と、技術について書かれた部分に分かれているため、読む人の好みによってどっちを重視するのか変わると思うんですね。
思想については、金剛禅読本や僧階読本のなかで、教範に書かれていることを、分かりやすい言葉でまとめられているので、現役の比較的新しい拳士でもその中身を知ることは出来ますが、技術の方はどうなのかと言えば、さすがに「体力に応じて修行する」の言葉通り、人それぞれ体格や年齢、性別、地域、少林寺拳法を学んだ時期によって、少しずつ個性があるのが現実ですよね。
技術に個性があるため、当然教範に書いてある技術と、実際に学んでいる技術が少しずつ違っていることは、よくある話だと思います。
開祖から直接手ほどきを受けた古い先生方の中には、「教範に忠実であるべき」と仰る先生と、「教範に載せているのは、技術の1つであって、全てではない」と仰る先生がおられるので、これまた解釈の違いという部分はあります。
中には、開祖が書き間違えて記載していると言われている部分もあれば、開祖があえて隠すためにちゃんと書かなかったところもある、という事を仰っている先生もおられます。
この辺りの真偽のほどは、教範が作られた過程を知る先生にヒアリングしないといけませんが、それを知ったとしても今の教範の中身が変わるわけではないので、僕はあんまり重要じゃないかなぁと(・・)(。。)
古い教範を見比べていても、昭和三十年版とその後のものとでは写真が変わっているので、そもそも見たままの捉え方が変わってしまった技術もありますし、教範でなくても古い古い技術資料と、現在流通している技術DVDとでは全然違う形に見える技術もあります。
さあ、こういった状況を考えたときに、「技術」と「教範」をどう捉えるのか?と言うとことが大切ですね。
僕自身の考えは、「教範に載せているのは、技術の1つであって、全てではない」と仰る先生の立場が一番現実に即しているんじゃないかと思います(・・)(。。)
書いてある技術は、一つの基本として守るべき規範ではありますが、それを基本として様々な方法を、自分で考え工夫をして身につけていくことが、自己の成長に最も大切なんだと思います。
あと30年もすれば、少林寺拳法が生まれて100年が経過します。
その頃には開祖から直接手ほどきを受けた先生方から技術について学ぶ機会は、もうないかも知れません。
そうすると、結局最後は教範に戻ってくることになるので、「技術の原点」と「技術の発展」の二つを同時に考えて、「技術の発展」のみに精力を注ぐのではなく、原点も大切にしていきたいですね(-人-)合掌
(北野)